
大阪大学が発信するホットなトピックの数々をお送りする「ハンダイラジオ」。
今回は外国語学部(箕面キャンパス)から、ビルマ語専攻のみなさんをお招きしました。
<出演>
大塚行誠(おおつか・こうせい)さん(大阪大学外国語学部ビルマ語専攻 准教授)
衣畑沙和音(きぬはた・さわね)さん(同専攻3年)
飯泉陽(いいずみ・ひな)さん(同専攻3年)
東南アジアの国であるミャンマーは、旧名をビルマといいました。
大阪大学外国語学部のビルマ語専攻は1945年4月、戦時中に設立された日本最古のビルマ語教育機関です。
現在でも、ビルマ語を専攻できるのは他に東京外国語大学だけなので、日本でも貴重なビルマ語専攻となっています。
●ビルマ語?ミャンマー語?
現在の国名は「ミャンマー」なので、言葉も「ミャンマー語」なのかと思いますが、なぜ「ビルマ語」なのでしょうか?
「ビルマ語とミャンマー語は、基本的には同じ言語を指す名称です。日本政府や外務省などでは、ミャンマー政府の方針に合わせて『ミャンマー語』と呼ぶことが多いです。
一方で、大学や研究機関などでは昔からの学術的な名称の『ビルマ語』をそのまま使い続けています。どちらも間違いではありません」
もともと「ミャンマー」は文語的な響きのある言葉で、それを口語的に素早く言うと「バマー」と音が変わります。その「バマー」が江戸時代にオランダ経由で日本に入ってきた際に「ビルマ」と訛って伝わり、それが日本で定着したそうです。
ビルマ語は語順が日本語と同じで、単語さえ覚えれば日本語話者にとっては大変取っ付きやすい言語といいます。
ここで、簡単なビルマ語を。
こんにちは:ミンガラーバー ※朝昼晩使えます
ありがとう:チェーズティンバーデー
トイレはどこですか:インダー ベーマーレー ※インダー(トイレ) ベーマーレー(どこですか)
・・・これさえ覚えれば、ミャンマーに行っても何とかなる?

●大石版に刻まれたビルマ語
大阪大学箕面キャンパス1階のエントランスには、吹き抜けの2階天井まで届く名物・大石版があり、25の専攻語の名文句が刻まれています。上から、設立が古い順に並んでいて、ビルマ語は全体の真ん中辺り。
その文句は
”知識という黄金の壺は誰も盗むことができない”
というものです。
これほど大学にふさわしい言葉もないのではないでしょうか。

●あなたは何曜日生まれ?
ところでみなさんは、何曜日生まれですか?
大塚さん「僕は木曜日です」
衣畑さん「私も木曜日です」
飯泉さん「私は金曜日ですね」
なぜか即答するみなさん。その訳は・・・
「ミャンマーには『八曜日』という概念があり、生まれた曜日がとても重要なのです(水曜日のみ午前/午後で別)。占いや、仏塔(パゴダ)の礼拝場所なども曜日ごとに分かれています。社会や文化に曜日が深く根付いていて、名前もそれによって付けられるんです」
ビルマ語専攻の学生は、入学早々にビルマ名を与えられるとか。
衣畑さん・・・マンマールウィン
飯泉さん・・・ティーティーハン
大塚さん・・・ピーピョワン
最初の文字の子音が、曜日により決まっているため、ビルマ名を聞けば何曜日生まれかすぐわかるそうです。

●ミャンマーにも納豆が!?
意外なことに、ミャンマーには「納豆」を食べる文化があるそうです。
「納豆文化圏と言えるほど、ミャンマーのさまざまな地域に納豆があります。特にシャン族やチン族といった山岳地帯の少数民族の食卓によく出ます。ビルマ語では『ペーボー』と呼ばれます」
大塚さんによると、チン族の納豆は日本の納豆にすごく近くて粘り気もあり、「ご飯にかけて食べるととても美味しい」とのこと。
ミャンマー人に会ったら、納豆の話題で盛り上がれるかもしれません!?
●チン族の言語研究
大塚さんの研究テーマは、ミャンマーの多くの民族の一つ・チン族の言語研究です。
チン族の中でも、山一つ隔てると「全く別の言語」になるといい、その数は50言語にもなるとか。
「この言語を研究し始めたのは、未開拓の分野だったからです。世界的に見ても研究者は数人程度で、全く手つかずの部分も多く、その研究を進めれば自分が第一人者になれるので」
大塚さんが、実際にチン族が住む地方(ミャンマー北西部)を訪ねたとき、印象的な出来事が。
一人の老婆が、突然大塚さんにすがりついて、何かを話しかけてきました。
よく聴くと、片言の日本語らしき言葉も。
後でわかったのですが、そのおばあさんは戦時中の「インパール作戦」で、日本軍の兵士たちが行軍していくさまを目撃していたのです。
「あの頃の日本の兵隊たちは、ちょうどあなたと同じ年頃だったのよ」
懐かしさがこみあげて、思わず・・・。
チン族の地域は、ちょうどインパール作戦の行軍経路に当たっていました。敗走の途中、病気と疲労と飢餓に襲われ、多くの兵士がそこで命を落としたのです。
「バイクに乗っている村人のヘルメット、よく見ると日本軍の鉄カブトだったりしました」
ミャンマーと日本の関係を考えるとき、これも忘れてはならない事実と言えるでしょう。

●学生のお二人、隣国タイに短期留学
現在のミャンマーは情勢が不安定で、内戦状態にあります。
そのため、たとえビルマ語専攻の学生であっても、留学は認められていません。
大変残念なことですが、それでも衣畑さん、飯泉さんはせめて近いところまで・・・と、隣国のタイ、チェンマイ大学に短期留学し、ビルマ語を学んできました。
ミャンマーに近いこともあり、街にはミャンマー料理店も多く、ミャンマー人の店員と話したりして、とても有意義な留学になったそうです。
でも、何か失敗談もあるでしょう?
「トイレに紙を流しちゃいけないっていうのを、ついうっかりして・・・」
トイレが詰まって、大騒ぎに!?
今だから笑えるハプニング。それでも、お腹を壊すこともなく、充実した楽しい留学体験だったそうです。
●今後の目標と、ビルマ/ミャンマーの魅力
番組では、みなさんから「ミャンマークイズ」も出題していただき、楽しい収録となりました。
最後に、それぞれの今後の目標を。
大塚さん
「今後もチン族をはじめ、ミャンマーに暮らす多種多様な民族の文化や社会について研究を深めていきたいです」
衣畑さん
「ミャンマー語が大好きなので、ミャンマー料理店などに通って、ミャンマー人の友達を100人作りたいです!」
飯泉さん
「ミャンマーの言語や文化が大好きになったので、将来はミャンマーに関われるような仕事に就きたいです」
大塚さん、ミャンマーの魅力って?
「一番の魅力は『人』です。大変な情勢下でもたくましく、深い考えを持って生きています。街中でミャンマーの方を見かけたら、ぜひ『ミンガラーバー』と声をかけてみてください。みなさん、とてもフレンドリーにお話ししてくれますよ」
現在、在日ミャンマー人は急増中で、14万人に及ぶといいます。
つまり、箕面市の人口とほぼ同じ。
気さくで人懐っこいミャンマーの人たちと、日本で出会ったりすれ違ったりすることも多くなるでしょう。
今後もし出会うことがあれば、「ミャンマーにも納豆があるんですって?」と話しかけてみるのも、面白いかもしれませんね。



