リンク
番組(コーナー)名
2026年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  
アーカイブ

ふらっとちゃっと 高速PCRでインフルを爆速検出!?産総研の男・永井秀典教授


大阪大学で環境を学ぶ学生がお送りしているラジオ番組「ふらっとちゃっと」。大学の先生や留学生をゲストに迎えたり、いま話題のテーマで討論したり、地域で行われている催しに参加して取材したり、毎月趣向を凝らしてお届けしています。

<発掘!大阪大学>
大阪大学の先生や留学生をゲストに招いてお話を聞くこのコーナー。
今回のゲストは、私たちの健康を支える「未来の検査技術」の第一人者。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の上級主任研究員であり、大阪大学大学院 工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻の教授でもある、永井秀典先生をお招きしました。

■ PCR検査は「1兆倍」に増やす魔法の技術?
コロナ禍で一気に耳にするようになった「PCR検査」という言葉。しかし、その正体を知る人は意外と少ないかもしれません。
永井先生、わかりやすく解説をお願いします。

「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)とは、一言で言えば『遺伝子を増やす技術』です。1993年にキャリー・マリス博士がノーベル賞を受賞した技術で、本来は細胞の中で起きている現象を、試験管の中で再現したものです」

驚くべきはそのパワーです。狙った遺伝子がたった1個でもあれば、それを理論上1兆倍にまで増幅できるといいます。この驚異的な感度があるからこそ、犯人捜査や親子鑑定、そしてウイルスの微量な検出が可能になるのです。

■ 「1時間待ち」を「10分」に変える高速化の衝撃
永井先生の研究の核は、このPCR検査の「高速化」にあります。

「病院で検査を受けてから1時間、2時間待つのって、しんどいですよね?」

そこで先生が開発した装置。なんと従来の10倍、最短10分程度で結果を出すことができます。
患者さんの目の前で、すぐに診断を下せるようにしたい・・・その思いが、インフルエンザA型・B型の検査キットとして結実し、今年2月には国の承認も受けました。
これまでの検査(イムノクロマト法)に比べ、感度はなんと1万倍。
「熱が出てから6時間経たないと判定できない」という従来のつらい待ち時間が、PCRの高速化によって「熱が出る前」でも判定できる・・・そんな未来がすぐそこまで来ています。

■ 友人の夢を背負い、研究者の道へ
永井先生が研究者を目指したきっかけは、不本意な道を選んだ親友の存在でした。
「大学3年生の冬、阪神淡路大震災が起きました」
被災したその親友は、経済的な理由で大学院進学を断念せざるを得なくなったのです。
その時、永井先生は心に決めました。
「彼の分まで頑張って、本気で研究者を目指そう」

「命とは何か?」という根源的な問いからスタートした先生の研究は、微細加工技術を経て、いつしかPCRという「命を守る技術」へと繋がっていきました。

■ 産総研×教授×起業家。三足のわらじを履く理由
永井先生は、大学発ベンチャーを立ち上げた起業家という顔も持っています。
なぜ、安定した研究者の立場にありながら、リスクのあるビジネスの世界へ飛び込んだのでしょうか。

きっかけは2008年のリーマンショックでした。共同開発していた企業が、景気後退により製品化を断念。
「企業に任せていては、良い技術も世の中に出ない。だったら自分でやるしかない」
そう考えた先生は、産総研の「兼業制度」を活用し、研究を続けながら起業するという「ローリスク・ハイリターン」な戦略を選びました。

「ビジネスは、やりたい研究を続けるための『手段』です。自分でお金を稼いで、いつかノーベル賞級の好きな研究を思いっきりやりたい。それが私のモチベーションなんです」

■ 描く未来は「家庭に1台のPCR」
永井先生が見据える未来は、さらにその先にあります。
現在、各家庭に体温計があるように、「家庭用ポケットサイズPCR」を普及させたいと考えています。
病院に行くのがしんどい時、家で息をふーっと吹きかけるだけで「これはインフルエンザだな」「これはただの風邪だ」と判別できる社会。そんな「患者の負担を究極まで減らす社会」を目指し、先生は今も走り続けています。

■ オフの顔は、子どもに代わってマイクラをやり込むお父さん!?
53歳とは思えない若々しい永井先生ですが、オフの時間は意外にも親しみやすいパパの顔。
中学受験を控えたお子さんの代わりに、夜な夜な『マインクラフト』で穴を掘り進めたり、送り迎えのドライブを楽しんだりと、日常の小さな幸せを大切にされています。

「大学生のみなさんは税金をいただいて研究をしている。だからまずは世の中に恩返しをして、自分だけでなく周りの人も守れる、懐の大きい人になってほしい」

阪大生たちへ向けたこの言葉には、数々の困難を乗り越えてきた先生の優しさと覚悟が詰まっていました。
永井先生、素晴らしいお話をありがとうございました!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次